ハワイの不動産を購入する人には、様々な目的があります。
最も一般的なのは「住居目的」と、こちらのメディアでしばしば取り上げている、「投資目的の不動産購入」です。
また、その他に、富裕層中心に「節税目的」で不動産を購入する人もいます。
今回紹介する穂波さんは、まさに海外不動産購入によって節税を実施している方です。
現状では節税は一定程度効果を発揮しているようですが、中長期的に考えると、必ずしも現行の方式をいつまでも使えるとも限らず、心配しているようです。
今回はそんな穂波さんの節税海外不動産購入体験談を紹介しますので、「不動産で節税を」と考えている人は、参考にしてみてください。
目次
会社役員で所得が多すぎるので、節税の方法を考えていた
私は穂波(50代・男性)と言います。
ここ数年企業の役員をつとめていますが、業績が良いこともあり、こういう場なので敢えて申し上げますが、所得がかなり高い状況が続いています。
一方、役員と言っても、会社員なので、あくまで本業の所得は給与所得となり、当然のように最高レベルの所得税率が適用されている状況です。
実際放っておくと、所得の半分くらいは税金に持っていかれている状況で、何とか税金を下げる方法はないかと、近年考えているところです。
結局は自分にできそうで、法に触れない節税対策は、不動産投資くらいだなと考えるようになりました。
まずは国内の不動産購入を考えてみましたが、なかなか思うように節税できそうもありませんでした。
国内の不動産購入で節税となると、所得から経費や不動産の損失額を、給与所得から実質的に引き算できるということなのですが、これらの大部分は実際に発生している損か、実際に自分で支払っている金額ということになります。
それだと結局、不動産の運営によりお金が出て行っている格好なので、いくら税額を減らせても、お金が出て行ってしまいます。
可処分所得に対してはプラスの影響はなく、むしろ、結局不動産の経費が高くついたり、損が出たりして、かえってマイナスになるというパターンの方が多いということです。
一方、自分のお金が実質的に出ていかないのに、経費として算入できる部分もあります。
それは「減価償却費」というものです。
不動産というのは経年劣化していくものであるという前提のもと、「建物部分」について、法律で決められた年数で価値が「ゼロ」となるよう、毎年すこしずつ価値を下げる、つまり、下がる価値の部分を「費用=経費」として認識していくというものです。
この考え方に従えば、不動産を保有しているだけで毎年一定額(定額法の場合)が、経費として計上でき、それにより所得から引き算して節税対策とする余地があります。
この減価償却費を用いた節税は、日本の不動産でも全く不可能というわけではないですが、「効果としてはかなり薄そうだな」という印象でした。
なぜなら日本の不動産は、経年劣化により実際に建物の価値が大きく下落するので、結局、売却時に価値が大きく下がってしまうからです。
それでは結局、売却するときに損が出ます。
減価償却費はただその損失を、先に分割しているだけに過ぎないので、その時々でお金を払っているわけではなくても、売却時に「損」という形で、自分で負担している金額で税金を下げているにすぎないのです。
ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、ここまで考えたときに、「年数が経っても建物の価格が下がりにくい不動産を探せばいいのでは?」と考えるようになりました。
日本国内ではなかなか見つけるのが難しいですが、海外であれば、むしろ「年数が経っても建物の価値は下がらない地域は、たくさんあるのでは?」と、思いました。
そこで初めて、「ハワイの不動産購入」を考えるようになりました。
海外の中でハワイを選択した理由としては、ただ建物の値段が落ちにくいというだけではなく、土地の不動産価格も非常に堅調であるといううわさを聞いたことがあったので、「目的は節税だけど、多少トータルで儲かるかもしれないな」と、思ったのが大きいです。
減価償却費の仕組みを確認し、頑張って木造の一戸建てを購入
さて、そういうわけでハワイの不動産を探し始めたわけです。
その過程で、「投資初心者はホノルル市内のコンドミニアムを購入し、賃貸用と貸し出すのが無難」というお話を、何度か目にしました。
確かに、ビーチ近くの立派なコンドミニアムは、人気がありそうで、貸出しやすいだろうなと思いました。
そういえばこの点も途中で気づいたのですが、不動産で減価償却費を計上する場合には、「不動産所得」を発生させる必要があり、要するに「賃貸用」として不動産を保有しなければなりません。
ただ持っているだけの、自身の住居用では減価償却ができないのです。
従って、貸し出しやすい物件を、選ぶのも重要なポイントではありました。
そういうわけで最初は一般的な例に倣って、「コンドミニアム」を探していたのですが、そこで気になったのが耐用年数の問題でした。
不動産の減価償却というのは、建物の作りによって、「法定耐用年数」が決まっています。
要するに建物の取得価格部分の金額を、それぞれの耐用年数で割って、毎年減価償却費として計上していくわけなのですが、この耐用年数は、RC(鉄筋コンクリート)で47年、木造で22年となります。
つまり、同額の取得金額だとすると、木造の方が短い期間で一気に多くの金額を経費として発生させ、見かけの所得を減らすことで、節税することができます。
ただ、コンドミニアムは高層なので、鉄筋コンクリートの物件ばかりです。
つまり、一気に経費発生させるためには、木造、築年数の経った一軒家を購入する方が有利ということになります。
一般的には借り手がつきにくい一軒家ですが、こうした利点を加味して、一軒家を購入して賃貸運営する余地はないかといろいろ調べてみることにしました。
すると、ワイキキから近い地域の一軒家であれば、富裕層の家族などには、一定程度ニーズがあるということを知りました。
一方、借り手が付きそうな立地と、物件のメンテナンスがしっかりされている物件は、コンドミニアムよりはずっと高く、100万ドルクラスは確保する必要がありました。
これが恐らく「不動産投資初心者には勧めにくい」理由の一つだと思います。
コンドミニアムであれば、50~60万ドルクラスでも充分な物件があります。
なかなか不動産投資初心者で、1億円近い金額を一か所に投資しようという方は、多くないように思えますからね。
しかし、私は奇しくもずっと独身で来ていたこともあり、日本円で1億円=100万ドル程度の自己資金がある状況でした。
というわけで、100万ドルクラスのミドルレベルの木造戸建て物件を精査しました。
その中で、「築古物件を探した方が、償却を急速に進められる」ということを勉強しました。
中古購入の場合の耐用年数は、「法定耐用年数から築年数の80%を引いた金額」で計算することになります。
もし耐用年数を超えた年数の物件を購入した場合は、自動的に「法定耐用年数の20%」の期間が適用されます。
つまり木造の場合は何と、建物の購入金額を「22年の20%=4年」で償却することになります。
ようするに、1年で建物の取得金額の4分の1を、減価償却費として計上することができるというわけです。
これはたぶん、日本の建物はそれくらい急速に価値が下がる市場だから、こんな風になっているのだと思うのですが、冒頭書いた通り、ハワイは適切にメンテナンスされていれば、築年数により価値が下がることは、ほとんどありません。
優良物件になると、「どのようなメンテナンスがされたか」、詳細に記録されており、これが「建物の価値を担保」する素材になっています。
そういうわけで、私は最終的に100万ドルクラスの物件を購入し賃貸に出しました。
これにより、私の所得は税率計算上、1年あたり2500万円程度下がった所得から計算されるということになり、大幅な節税効果が実現しました。
100万ドルも出せば、さすがに粗悪物件でなければ買えないということもなく、しっかりメンテナンスされていた優良物件を購入できました。
実際に借り手もしっかりと付き、副次的ながら賃貸収入も発生しました。
この節税対策のポイントは、償却の期間が過ぎてしまったら、減価償却費が発生しないというところです。
つまり、4年たったら、売却を考えていった方がいいということになります。
ちなみに減価償却後の価値(全部償却した場合は、建物部分はゼロ円で土地代のみ)と、売却時の金額は譲渡益となり、この部分が5年未満ですと、39.63%、5年以上ですと、20.315%(復興特別所得税込み)かかります。
これが所得税(住民税込み)の最高税率より低いので、譲渡益が出ても、トータルでは節税効果が維持されるわけです。
しかし、見ての通り、5年たつと、急速に税率が下がるので、売却価格にもよりますが、基本的には5年待った方が、より節税効果が大きいということになります。
私もこまごま計算してみたのですが、1年間は減価償却ができなくなるということはありますが、それでも1年待った方がよさそうでした。
実はちょうど今年で丸4年になるのですが、不動産価格もさほど下落しそうもないので、もう1年待ってから売却するつもりでいます。
今後もいつまでもこの節税効果が使えるかは不安・・・
そんなわけで、私はいい感じに節税ができているわけですが、この節税は日本の税制と会計のルールが、日本の不動産事情のみを基にルール付けされているところにポイントがあります。
もし日本の不動産が海外のように経年しても劣化しないものだったら、おそらくこのような減価償却ルールは、ないものと想定されます。
この前、聞いたところによると、日本の会計ルールなどをウォッチしている「会計監査院」というところが、このルールにより海外不動産の運用で大幅な節税が実現してしまっている実情について、疑義を出しているとのことです。
つまり国もこのルールの不備に気づき始めているということなので、近い将来、「海外不動産は同様のルールで減価償却ができなくなる」、「海外不動産は減価償却のルールが変わる」など、このような節税が効かなくなるリスクがあると感じています。
その点も考慮すると、なおのこと、短期間の耐用年数の不動産購入が、この節税対策には向いているといえますので、私は今後も木造一軒家の物件を、中心に運営していきたいと思います。
副次的ではありますが、何だかんだ不動産収益も一定程度、上がっているので、いずれ節税ができなくなってしまうかもしれないと認識しつつも、当面は不動産の運用を続けていきたいと考えております。
最後に
今回は穂波さんの体験談をもとに、ハワイの不動産を用いた代表的な節税のやり方についてご紹介しました。
穂波さんの最後の部分にもあるように、近い将来、この節税方法は使いづらくなってくる可能性もあります。
もし、節税での不動産購入を考えている人は、急いで行動するとともに、穂波さんのように、耐用年数の短い木造物件を狙い、速く減価償却させてしまうのが一案です。
尚、ハワイの不動産は価格推移が、長期間非常に堅調なので、「節税効果が見込めなくなるリスク」を是としつつ、不動産購入をチャレンジする場合も、推奨される地域と言えるでしょう。
不動産収益も加味すれば、万が一節税効果が見込めなくなった時でも、「結果的にプラスであった」となる可能性は高いといえます。
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