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日本に居住しつつ、ハワイ州で投資用不動産を所有している日本人投資家の方にとって、確定申告で減価償却ができるということは、大きな節税効果を得られる機会になります。
減価償却というと、何だか難しい印象を受けますが、どういう仕組みでどのように節税効果が受けられるか知っておくことは重要です。

この記事では、ハワイ不動産の減価償却についてご説明します。

ハワイ州に不動産を所有する日本人には、日本の税法が適用される

法律日本の税法は日本の居住者に対して適用されるので、日本人である私たちは、日本の税法に基づく日本の税務局への納税が必要になります。
また、不動産投資の醍醐味は、不動産投資という事業にかかる経費を、確定申告することにより、適用される所得税をさげ、課税価格をへらすことで、節税メリットを享受できることです。

多くの不動産投資家は、きちんと日本の税務局に確定申告(青色申告)を行い、税金の還付を受けています。
これは、投資対象が日本にある場合に限られず、海外にある場合でも同様です。
税金は人に着目して課税されますので、海外にある不動産であっても、日本人がそこから収益を得ているのであれば、課税されるという考え方です。

不動産が所在するハワイ州でも確定申告が必要

二重課税を防ぐ仕組み

日本で不動産投資をする場合と異なり、海外で不動産投資をする場合は、不動産がある国の税務当局にも、その不動産から得られた収入を申告する必要があります。
日本での申告は納税者の全体の収入について申告することになりますが、ハワイ州の場合は物件から得られた収益のみが申告対象になります。

ここまで読んでいただいた方の中には、それでは二重課税されてしまうのかとご心配になる方もいらっしゃると思いますが、日本とアメリカは二重課税を防ぐための条約を締結しています。
一時的には日本でも納税し、ハワイ州にも納税することにはなってしまいますが、ハワイ州で確定申告をすることによって、日本の税務局に納税した金額については、還付を受けることができます。

ハワイでの確定申告は、税金の専門家に依頼することがおすすめ

日本の確定申告手続きと、ハワイ州での確定申告手続きは、申告をする相手方も違いますし、フォーマットや書き方も異なりますので、日米どちらの税法にも詳しい専門家のサポートを受けることがベストです。
ハワイ州で不動産を所有している外国人は、日本人がもっとも多いといわれており、ハワイ州への日系移民の人口も一定程度いることから、日本の税法についても、ある程度前提知識がある専門家は一定数います。

物件の管理会社などをとおして、米国の公認会計士、弁護士を紹介してもらい、手続きを依頼することをおすすめします。
確定申告は毎年行うものですし、大切な不動産の情報を開示するパートナーになりますので、紹介を受けた専門家数名に会ってみて、ご自身の感覚で、相性がよく信頼ができ、「長くつきあっていきたい」と思う人を選びましょう。

確定申告の大きなポイントである「減価償却」とは

確定申告確定申告で大切なポイントになるのが、減価償却という経費の項目です。
日本での申告でも、ハワイでの申告でも重要ですが、まずは日本の確定申告時の減価償却についてご説明します。

課税所得と損益通算の考え方

日本での税金は、個人であれば所得税、法人であれば法人税として、1月から12月分の所得を計算し、その所得に応じた税率をかけて課税されます。

日本の所得税は累進課税といって、所得があがればあがるほど、税率があがるということになります。
したがって、単純な節税という意味では、所得が低いほうが有利ということになります。

ところで、課税対象となる所得は、実際の収益から事業にかかったコストである経費を差し引いた金額になります。
これを税法では、損益通算とよんでいます。
利益から赤字分を差し引くという意味ですね。

経費は不動産収益を生むために支払が、必要となった金額を含めることができます。
不動産投資でいえば、物件の固定資産税、金融機関から借り入れた金額についての利子、不動産投資を学ぶためのセミナー・書籍代、地震・火災保険料などは経費として計上することができます。
収益から経費を引いた金額が、実質としての、納税者の収入となるので、かかった経費は忘れずに領収証をとって申告する必要があります。

減価償却とは

上述のような毎年支払っていく固定資産税や、保険料などの経費のほかに、減価償却とよばれる、何年間にわけて経費計上していく項目があります。
不動産の設備、建物、備品などは購入した年に全部使い切って消滅してしまうものではなく、購入後、何年間も使い続けられることが通常です。

その実体にあわせて、これらを購入調達した年の経費で全て計上するのではなく、何年かに分割して1年分の経費を、きめて毎年計上していくことを、減価償却といいます。
また、減価償却として申告されていく対象を減価償却資産とよびます。

新築建物の減価償却

減価償却の際に、何年間にわたって分割していくべきなのかは、日本の税法上に定めがあります。
建物の減価償却は、その建物が何年間問題なく住むことができるかという観点から、法定耐用年数というものが決められており、法定耐用年数期間で分割して減価償却をしていくことになります。
建物の頑丈さは、建物の作り方や素材によって大きく異なるため、法定耐用年数も、構造、又は用途によって、固定で定められています。

具体的にいうと以下のような定めとなっています。

① 鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造の建物については、事務所用が50年、住宅用が40年。
② れんが造、石造、ブロック造の建物については、事務所用が41年、住宅用が38年。
③ 金属増、骨格材の肉厚4ミリメートル超の建物については、事務所用が38年、住宅用が34年。
④ 木造または合成樹脂用の建物については、事務所用が24年、住宅用が22年。
⑤ 木造モルタル造の建物の建物については、事務所用が22年、住宅用が20年。

木造建築は自然素材であるため、鉄骨や金属に比べて耐用期間が短い傾向があります。
風雨や湿気による影響をどうしても受けやすいため、一定期間がたてば、立て替えていくことが前提とされた建物であるからです。

中古の建物の減価償却

購入されたときに、既に上記の法定耐用年数が経過している建物については、法定耐用年数の20%、法定耐用年数がまだ残っているけれど、一部は経過しているという建物については、法定耐用年数の残り期間(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)となります。

たとえば、築20年の中古で売り出された鉄筋コンクリート造の場合、購入した時点でまだ30年間の法定耐用年数が残っていることになります。
30年+経過した年数の2割である4年で、法定耐用年数は34年ということになります。

日本での減価償却の方法

法定耐用年数について、具体的にどのように減価償却されていくのでしょうか。

減価償却の方法としては、毎年一定の金額を経費として計上する「定額法」と、毎年一定のパーセント割合を計上する「定率法」の2つがあります。
個人事業主に対しては定額法法人に対しては定率法が適用されることとなります。

節税の具体例

節税個人事業主として、ハワイで不動産を購入して第三者に賃貸している場合を考えて見ます。
賃料収入が仮に年400万円相当だったとして、固定資産税、修繕費、銀行などの利子とともに、定額法で算出した減価償却費が500万円だった場合、100万円が赤字となります。
個人事業主でその建物の賃貸収入しかない場合は、単純に赤字となりますが、本業がサラリーマンで給与所得という方は、自分の他の収入である給与所得からも、その赤字部分を差し引くことが認められます。

また、ハワイという土地柄、ご自身や家族が利用していない期間は、第三者に賃貸して賃料収入をえつつ、数週間など、まとまった期間は自己利用を考えているという投資家も大勢いらっしゃいます。
こうした方は、時間や場所にしばられず、好きな場所で仕事をしたいというお考えから、フリーランスという働き方を選ぶことも多いです。
フリーランスとしての収入からも、不動産賃貸の損益通算の数字を差し引くことができます。

上述のように日本は累進課税の国ですので、所得税率は、課税所得によって5%から45%まで大きく変動しますし、控除額も同様です。
赤字は事業の観点からみるともちろん歓迎できるものではありませんが、でた赤字をきちんと確定申告していくことで、余分な税金を払わなくてもよいという事実を把握して、適切に還付を受けることが非常に重要であることがお分かりいただけると思います。

たとえば、所得が900万円の人と950万円の人では、課税される税率が1.5倍に異なりますので、手取り感としての裕福さは、900万円の人のほうが感じやすいともいわれています。
また、住民税は所得税に連動するため、所得税がさがると、住民税の軽減にもなります。

ご参考に、国税庁が発表している課税所得別の税率と控除額の一覧を引用します。
ご自身の収入と照らし合わせてみてください。
表のランクの上限か下限の瀬戸際という方は、不動産投資により上手な損益通算を受けることにより、適用される税率がかわり、大きな節税メリットが受けられる可能性があります。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

ハワイ不動産の建物の減価償却

ハワイ州においても、日本と同様に減価償却の仕組みはもちろんあります。
しかし、大きな違いとして、日本では定率法と定額法の2種類の減価償却方法があり、建物の素材や用途によっては、最長50年もの間、減価償却をすることができることに対して、ハワイ州では法定耐用年数を27.5年から39年とした定額法の方法しかありません。

ハワイ、特にワイキキェリアでは、昔から多くの不動産が存在し、リノベーションやオーナーチェンジを繰り返して流通しているので、法定耐用年数はとうにすぎてしまっていることも多いです。
また、上記法定耐用年数は新築にも中古にも同様に適用されるので、日本と違い、法定耐用年数がすぎた建物には、減価償却が認められません。

建物は不動産経費の大きなものですので、減価償却期間が短いと、計上できる費用がへってしまい、収益が黒字化してしまいやすいことになります。
もちろん、節税のみを目的として不動産投資をすることは、本末顛倒であり、収益を最終的にプラスにもっていくことが目標ですから、黒字はよいことではあります。
ですが、築年数も踏まえたうえで物件を選ぶことで、より納得のいく投資ができるといえます。

ハワイ不動産の減価償却のよいところ

日本人は世界に類をみない新築好きといわれていて、新築を購入して中古となった瞬間、建物の価値が大きく下落するといわれています。
一方、アメリカなどの先進国では、中古物件の流通量のほうが新築物件の流通量よりも多く、またきちんと管理された中古物件は新築とほぼ価値が変わらない、またはむしろ価値があがるという状況です。

なお、日本でもヴィンテージマンションとよばれる、一部の高級マンションでは、こういった傾向が見られますが、ごく限られた物件です。
建物の価値が目減りしないということは、転売するときに、購入価格よりも高く売れる可能性があるということです。
キャピタルゲインがでたり、キャピタルゲインまではいかなくても運用益を得たうえで、購入価格程度で売却ができれば、投資としては理想的なモデルであるともいえます。

中古一戸建てを運用していたA氏の運用例

資産運用給与所得が5000万円程度(年末調整を受けたあとの課税所得として)の会社役員A氏が、ハワイの中古木造一戸建て、築30年の物件を購入し、賃貸に出して年間400万円の賃料収入を得た場合の運用例と税金を考えて見ましょう。

物件選びの考え方

A氏は、ハワイで中古の一戸建てを選びました。
ハワイは土地が限られていますので、一軒家はかなり高い買い物になりますので、非常に悩みましたが、将来リタイアしたときに自分たちが住むかもしれないと考えて、ワイキキから少し離れた閑静な場所の一軒家を選択しました。
築30年と古めですが、アメリカの物件らしく、きちんとメンテナンスがされており、リノベーションも終わった状態でしたので、居住には全く問題がありませんでした。

ハワイの一軒家はコンドミニアムやタウンハウスなどに比べると高額ですので、物件価格は1億円くらいします。
日本では土地と建物をくらべると、土地のほうが圧倒的に価値が高くなりますが、ハワイではむしろ建物のほうが価値が高いとみなされます。

このケースの場合、土地が3000万円、建物が7000万円でした。
ハワイで新築の一戸建ては、ほとんど出回っていませんので、もちろんA氏の物件も中古です。

ハワイでは日本のように地震リスクは低いので、ほとんどの家が木造建築です。A氏の物件もまた、木造建築でした。

A氏のケースの減価償却額

築古30年の物件の法定耐用年数は、購入時点でわずか4年しか残っていません。
建物価格の7000万円を4年間で償却していく場合、年間1750万円を減価償却分として経費を、計上していくことになります。

A氏の給与所得は5000万円で、所得税率の中でも、もっとも高い税率である45%が適用されますが、1750万円を損益通算することができると、税率が5%さがるので、今回のハワイ不動産投資に踏み切らなかった場合に比べて、なんと所得税額が600万円もさがります。
日本のサラリーマンの平均収入が400万円という時代において、節税だけで600万円ということは、非常に大きなインパクトがあることをイメージいただけると思います。

また、上述のように、住民税も所得税に連動して決定されますので、トータルの節税効果はかなりのものになります。
キャッシュフローが大きく、また本業が忙しいA氏の場合は、確定申告は顧問税理士にお任せをしていますが、税理士報酬も経費として控除ができるので、大きなインパクトはありません。

6年目にはいって売却

売却セミリタイアをにらんで一軒家を選んだA氏ですが、加齢とともに一軒家よりも便利なコンドミニアムのほうが、自分や家族の状況にあっているのではないかと思いなおすようになりました。
若い頃は運転には自信があったのですが、視力も悪くなってきたので、タクシーやトローリー、徒歩で、ビーチ、 病院やショッピングセンターなどのインフラにアクセスが可能なアラモアナでのコンドミニアムに買い替えを決意しました。

一軒家を購入した際の不動産エージェントに依頼して売却に出したところ、ハワイの一軒家の需要は高く、購入時と同様の1億円で販売することができました。
建物は4年間で減価償却が済んでいる ため、0円と換算すると、譲渡所得は諸経費を控除しても、6000万円近く出ることになります。

不動産の譲渡所得には所得税が課税されるため、譲渡益の6000万円の半分近い3000万円程度が、税金として課税されることになってしまいます。
不動産譲渡についての所得税を考えると、売却に後ろ向きになってしまいがちですが、減価償却できる金額が圧倒的に増える不動産の売却はタイミングが至極重要です。

中古物件のように物件自体の個性が強い取引は特に、買いたいという具体的な相手方がいるときに、お互いの事情を斟酌しあいながらディールをまとめていくことが、結局は利益がでる売買につながります。
不動産は生活ときってもきりはなせないため、学年や決算期の交代時期と密接にかかわりあい、値段が変動するからです。

3000万円の税金を払ったとしても、減価償却をしてきた節税分と、トータルでのプラスマイナスを考えると、実は1000万円以上の節税効果がでています。
上述のように、A氏のように、給与所得が高い場合は、最大限の税率が適用されているため、不動産賃貸事業の赤字によって、 課税所得をさげることで、税率も下がることになり 、毎年かなりの額が節税できるためです。

ハワイの不動産は、日本の不動産とはほぼ逆転状態で、建物のほうが土地よりも価値が高く算定されます。
このことは、減価償却の対象となる建物部分の価格が大きいことを意味するので、減価償却できる金額が圧倒的に増える減価償却できる金額が圧倒的に増えることを意味します。

また、中古市場が成熟しているため、きちんとメンテナンスをしていれば、その建物の価値は築年数がたっても下落しません。
建物の価値の下落は、キャピタルロスといって、投資家にとっての大きなロスですので、この心配をしないで、減価償却を安定的に期待できるという点は、ハワイ不動産投資の大きなメリットになります。

最後に

いかがでしたでしょうか。
ハワイの不動産投資において、日本よりも減価償却できる期間が短いことは確かです。

しかしながら、減価償却できる対象である建物の価値が、日本に比べて圧倒的に高いため、短期間で大きな減価償却メリットを受けることができ、投資の節税効果としては、非常に優れているといわざるをえません。
特に本業の収入が多く、節税という観点でハワイ不動産投資を考えておられる方には、確実に短期間で節税効果を享受できるというメリットは見逃せません。

税金は私たちの生活を支える大切なインフラである一方、きちんと考えて節税し、適切な対応をしているかしないかで、投資効果に大きな差をもたらす要素でもあります。
この記事を参考に、ぜひ一度税理士等の専門家に相談して、ご自身のハワイ不動産投資について、シュミレーションをしていただくことをおすすめします。

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