これからハワイの不動産を購入を考えている方のなかには、短期保有でキャピタルゲインを考えていらっしゃる方も、長期で保有してインカムゲインを着実に得ていきたいと考えていらっしゃる方もおられると思います。
短期保有、長期保有に関わらず、万が一のこともありますので、是非ハワイ不動産の相続についても検討しておいていただければと思います。

ハワイ不動産に限りませんが、不動産投資等をして、資産形成をしていくときに大切な視点のひとつは、自分が亡くなった後に、いかに配偶者、子や孫に、ご自身が不断の努力により築き上げた大切な資産を引き継ぐかということですよね。
資産を引き継ぐ、つまり相続のときには、手続きや税金がかかりますので、正しい知識を頭にいれて、十分準備をしておきたいところです。

ところで、日本の国民であり、日本に居住しているわれわれが、アメリカ合衆国のハワイ州にある不動産を購入し、その後自身が亡くなって相続が発生すると、どこの国の法律で相続手続きが行われ、またどこの国の税法でどのように課税されるのでしょうか。

この記事では、ハワイ不動産を相続するときに必要となる、日本とアメリカでの相続手続きについて、ご説明したいと思います。

相続手続きとは

人が亡くなると、その人が生前有していた債権債務(財産や借金)を、遺族が引き継ぐ手続きを相続手続きといいます。
相続では、亡くなられた方を被相続人といい、ご遺族を相続人といいます。

遺言をのこしているかどうかは、人それぞれですが、もし残していない場合は、法定相続人といって、法律で決まった人が相続します。
日本人が亡くなった場合は、たとえば、妻が1/2、子供が1/2(複数いる場合は人数割り)となります。

遺言を残している場合、その遺言が法律で決まった形式で有効であることを前提に、遺言で決められたとおり、財産が相続人に分配されます。
ただし、遺言書の内容がたとえば、妻や子ではなく、愛人にすべての財産を残すといった、不合理である場合は、そのまま遺言の記載で遺産が分配されるわけではありません。

遺留分といって法定相続人が必ず相続する財産は決まっていて、法定相続分の1/2は遺言書の記載にかかわらず、法定相続人がもらえるということになります。
相続の対象となる財産は、現金、有価証券、車や宝石などの現物、そして不動産等があります。

現物や不動産は、税務当局が決めた換算ルールにしたがって、その金銭的価値を評価します。
こうして、すべての相続財産を一旦金銭で換算し、それを相続人でわけるということになります。
これを遺産分割といいます。

相続をする際に、一定額は国に対して税金をおさめることになります。
これを日本では相続税といいます。

日本人の相続手続きにおいて、個人が保有していたハワイ不動産も、もちろんその方の財産の相続の対象となります。
そして、被相続人は日本国民であるため、日本の相続ルールや相続税が適用になりますが、アメリカにある不動産については、アメリカの相続税や登記名義変更についても適用になります。
したがって、二つの国のルールや税金を理解する必要があります。

アメリカの課税~遺産税~

日米両方の税法が適用になる

まず、誰もが気になる相続時の税金についてお話をしたいと思います。
上述のように、結論からいいますと、われわれ日本の居住者がハワイに不動産を所有する場合、それを相続するときには、日本とアメリカ、どちらの税法も適用になります。

日本とアメリカには租税条約があり、これに基づく税金控除がありますので、両方で実際に課税されるという国際二重課税の問題が回避されています。
しかし、大前提として、どちらの税法も適用にはなりますので、少なくともそれぞれの国の税務署に、相続のときの申告は必要になるのです。

遺産税は被相続人に課税される

まず、アメリカで相続のときにかけられる税金について説明します。

アメリカでは、相続税にあたるものをEstate Taxとよんでいます。
日本語に直訳すると、遺産税ですが、この名のとおり、亡くなられた方の財産全体に対して課税されます。

日本では相続税という名前のとおり、相続する方に着目して課税がされるのに対して、アメリカでは被相続人に対して課税されるのです。
結論としてはそれほど変わらないこともありますが、着眼点が違いますね。

課税財産の範囲

被相続人がハワイに永住して亡くなった場合を除き、日本からハワイで不動産投資をされる方の場合、被相続人はアメリカの非居住者になりますので、課税される財産はハワイの不動産や現地で開いた銀行口座など、アメリカにある資産のみが対象になります。
アメリカの遺産税という観点では、被相続人が日本で所有している財産にまで、アメリカで課税されてしまうということはありません。

ご遺族である相続人も日本に居住されていることが多いと思いますが、その場合、被相続人の全体の課税財産から6万ドルの基礎控除がなされます。
ところで、日本では相続時に配偶者控除といって、妻や夫が相続する場合の税金減額制度が認められています。

アメリカでも同様に、相続人となる配偶者がアメリカ居住者、または市民であれば、配偶者控除に相当する軽減措置が認められています。
しかしながら、残念ながら、配偶者が外国人であれば、この配偶者控除の対象にはならないので、相続人が妻や夫であったとしても、税金上の優遇は特にありません。

なんとなく不公平であるようにも感じてしまいますが、税法というものは、もともと政策的な観点で各国が定めるものでもありますので、一般的には外国人の相続については、自国民のそれよりは厳しい取扱いになってしまうのは、やむをえないことといえるかもしれません。

日本での課税

相続税の基本的な考え方

これまでアメリカの遺産税についてお話をしてきましたが、日本人の被相続人の財産が相続されるにあたっては、もちろん、アメリカの税法とともに日本の税法も基本的に適用になります。
したがって、日本の税務署にも相続申告が必要になります。

日本の税法は日本の居住者であれば、外国の財産であっても課税がなされるのです。
適用の有無の判断は、被相続人のほうが相続した際に、日本の居住者であったかどうかということになります。

被相続人が日本に居住しているのであれば、財産はハワイにある不動産だけということは、先ず考えられないと思いますので、どのみち相続申告はなさると思いますので、これを忘れる心配はあまりないかもしれません。

日本の税務局に納税する相続税を計算するには、まず相続財産全体の時価を計算します。
そして、相続財産から被相続人の人数にあわせた基礎控除額を差し引いて、残余がある場合に、その超過部分について、相続税が課税されます。

2018年8月時点の税法では、基礎控除額は3000万円+相続人の人数×600万円となります。
つまり、被相続人の方がハワイ不動産を含めて、2億円の遺産を残し、ご遺族が妻とお子さん2人、遺書がなかったと想定しますと、基本的にはこの2億円から基礎控除4200万円を除いた額が、相続税の課税対象となる遺産となるのです。

相続税率は、遺産の大きさに応じて、累進課税となっていきます。
1千万円以下だと、10%がもっとも低い税率で、6億円超だと55%で、もっとも高い税率となります。

相続財産を計算するときに、日本の不動産は路線値という、税務署が課税用に定めたルールにしたがって、評価されるのですが、不動産が相続対策となるといわれているのは、これが時価よりは低く評価されることが多いからです。
しかしながら、ハワイ不動産は後述するように、米国での課税ルールがありますので、一概に節税になるとも限りませんので、よくタックスの専門家に相談をしてみましょう。

二重課税の回避

外国でも日本でも相続に課税されると、あまりにも納税者に酷な結果になりますので、日本は多くの国と租税条約という条約を締結しています。
租税条約を結んでいる国同士では、お互いの国で納税をした部分については、自国では二重に課税をしないという取り決めをしています。
これを外国税控除といいます。

二重課税を避けるために、外国税控除として差し引かれる額は、ハワイ不動産についてアメリカで支払った税金と、日本で支払うべき相続額の額に、相続人の相続財産全体に占めるハワイ不動産の財産の割合をかけて求められる金額のどちらか少ない金額ということになります。
この外国税控除を受けるためには、確定申告が必要ですので、ご自身で準備するか、日本の税理士等の専門家に手続きをお願いしましょう。

ハワイ不動産の課税評価額

ハワイ不動産は日本での相続税の課税計算にあたって、どのように評価されるのでしょうか。

不動産は預貯金や保険金などのように資産評価が簡単ではないのですが、日本の不動産の場合は、路線値という課税用の評価額が公表されているので、それにそって計算されます。
一方、ハワイ不動産は遠い外国の地であることと、不動産の個性が大きく、なかなか評価が難しいところもあります。

実務上は、インターネット等などでの実売価格(MLSなど)を参考にしつつ、実務に精通している現地の不動産鑑定士や不動産エージェントに作成してもらった査定書等を添付資料として、税務署に提出することが一般的です。
査定は米ドルで評価されて送られてきますので、相続時点での為替レートで円換算をしてから、課税相当額が算出されるということになります。

プロベート

プロベートところで、アメリカでの相続手続きは、プロベートと呼ばれ、非常に煩雑かつ時間がかかります。
コンドミニアムでも1年、戸建てなどであれば、数年かかることもあります。

これは、裁判所にすべての手続きを検認してもらう必要があるため、それに非常に時間がかかるのです。
プロベートが終了するまでは、財産が凍結されるので、相続人といえど、相続財産を動かすことができ亡くなります。
プロベートになってしまった場合、米国の弁護士にさまざまな手続きをお願いするので、その費用もかなりかかります。

したがって、日本人投資家としては、なるべくプロベートを避けるための手段を講じることが一般的です。
自分がアメリカ人で、全ての資産がプロベート対象であれば諦めもつきますが、ひとつハワイ不動産をもったがために、プロベートをやらなくてはいけないということは、やるせないです。

具体的なプロベートの手続きとしては、まず、ハワイ州を含むアメリカでは、被相続人が亡くなった日から9ヶ月以内に相続申告を行わなければなりません。
上述のようにアメリカでは被相続人が納税者になりますが、実際には亡くなっているので、人格代表者という人をたてて行われることになります。
なお、相続申告期限である9ヶ月以内であれば、相続放棄ということもできますが、相続するハワイの不動産よりも債務が大きいという場合にしか行わないでしょう。

相続申告が遅れるとハワイ州では厳しい制裁があります。
特に亡くなったときから5年をすぎていると、わざと遺産税を逃れようとしたとみなされて、基礎控除等も受けられ亡くなり、課税も高額になりますので、気をつけましょう。

相続人は、被相続人の戸籍謄本、死亡証明書、相続人、すべての戸籍謄本を日本で用意し、内容を英訳して、公証役場で公証をしてもらったうえで、プロベート手続きを委託したハワイ州の弁護士にそれを送付します。
相続人が複数いる場合は、代表となる相続人を決めて、あわせて連絡をします。
代表として選定されると、上記の申告の遅れの責任は、その方が負うことになりますので、よく相談して慎重に決めましょう。

ハワイ州の弁護士はこれらの書類や、被相続人の方が米国で有していた遺産をすべて米国国税庁とハワイ州に納税申告をし、納税をします。
納税が終了すると、税務当局から納税証明書が送付されてきますので、弁護士がこれをそえて裁判所に、相続対象のハワイ不動産の登記名義変更を申請します。
裁判所がこれを認めて、登記が実際に書きかえられると、ようやくプロベートの完了ということになります。

プロベートを避けられる可能性がある手段

夫婦共有でもつ

プロベートを避けるための一つの手段としては、ハワイ不動産をたとえばご夫婦などで、共有にしておくという方法があります。
例えばご主人の単独保有で名義を持っている場合は、プロベートになると、財産が凍結されてしまって、ご遺族の方が手続き終了まで、それを動かせないことになりますが、共有者であれば、所有権に基づき、それを自由に使用・収益・処分することができるので、これを避けることができます。

アメリカでの所有権の持ち方には、①単独所有②夫婦合有③ジョイントテナンシー④テナンシーインコモンの4つの種類があります。
このうち、②③④が配偶者等の家族と一緒に所有すると言う方法になりますが、②の合有と③のジョイントテナンシーについては、不動産について、それぞれが何パーセントという持分の概念がなくて、全体がそれぞれに100%帰属するという持ち方になります。

④のテナンシーインコモンは、日本での不動産共有と同様に、お金を出した割合に応じて、共有者の持分がそれぞれ決まります。
たとえば、半分ずつお金を出し合って共有名義で不動産を購入した場合、それぞれが50%ずつその不動産の所有権を有することになります。

④のテナンシーインコモンを選択し、ご夫婦それぞれが出資した金額に応じて持分を有するという方法が、一番シンプルかつ、日本にもある持ち方なので、日本での税務処理上も問題が少ないです。

②と③はアメリカでは夫婦単位での財産保有が認められますが、基本的に夫婦別産制である日本においては、そういった制度はありません。
したがって、アメリカではよくある形である、②または③の形で不動産をもったけれど、資金はご主人のみが払ったという場合、日本では贈与税の対象となってしまうことがあります。

不動産の購入から登記までは、現地の不動産エージェントやエスクロー会社からの指示にしたがって、淡々とこなしていくことになりがちですが、事業者によってはこの米国と日本との法令の差を熟知しておらず、ジョイントテナンシーがアメリカでは一般的ですよとすすめられて、後から日本の贈与税の問題に気づくということがあります。
この点は注意しつつ、資金の出し方や登記名義を決めるときは、日米どちらの制度にも詳しい業者や、コンサルタントを選ぶことをおすすめします。

信託(Trust)

プロベートを避けるためのもうひとつの手段として、信託(Trust)という方法があります。
Trustにもいくつか種類がありますが、ハワイ不動産投資の相続対策として、よく活用されている方法は、Living Trustです。

被相続人となるハワイ不動産購入者が生きているうちに、購入時等に、受益者(ご家族)を指定しておきます。
ご購入者が生きている間は、ご購入者の資産になりますが、亡くなるとプロベートなしで受託者が受取ることができます。
信託にはいくつかの方法がありますが、Living Trustは生前、購入者が通常に個人資産として保有できるという意味において、魅力的な選択肢になっています。

法人としてハワイ不動産を取得する

日本でも不動産投資の収益が一定程度を超えると、法人化を検討される方も多いと思いますが、幸いなことにハワイでは、日本法人名義での不動産の保有を認めています。
法人は、法人格を主体としてみなすので、被相続人となる、設立した方が亡くなったとしても、法人の実在には影響がないということになりますので、プロベートを避けることができます。
法人を設立するには、登記費用や手間がかかるので、ある程度、不動産投資の規模が大きい方が、ハワイ不動産投資にも拡大される場合に向いている手段かもしれません。

大切なご家族のためにしておくこと

家族ハワイ不動産を含めて、保有している資産や、不動産エージェントや銀行などは、万一のことを考えて一覧表にしておき、家族と共有しておきましょう。
遺書があれば、そのことも告げておくほうがよいでしょう。

被相続人が亡くなると、ご遺族は動転しますし、生前、情報共有がなければ、そもそも何の財産をどのように相続手続きするべきかわからないことが普通です。
被相続人がハワイ不動産を有していることなど、つゆしらずに、相続申告期間がすぎてしまい、ペナルティが課せられるということは、ご家族のために避けなければならないことです。
エンディングノート等が今ブームになっていますが、日ごろから万一のことを考えて、情報の整理と共有をしておきたいものですね。

最後に

いかがでしたでしょうか。
ハワイ不動産の相続は、なかなか煩雑なものがありますが、ハワイに物件を所有している外国人でもっとも多いのは、日本人といわれていますので、多くの先輩投資家がとおってきた道でもあります。
情報や事例としては、そろっている分野ですので、ぜひ積極的に情報を集めて、ご自身とご家族にあった相続方法を考えておくことをおすすめいたします。

なお、ハワイ不動産投資でなんといってもかかせないのが、現地のパートナー選びです。
ハワイ不動産を購入されたときに、不動産エージェントを通じて取引をされたと思いますが、エージェントの提携先等で信頼できる管理会社を探しましょう。
相続処理等もパッケージで受託している業者は、多いので、ぜひ一度相談してみてください。

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