一次取得者層は投資家の脅威にも晒されている

機関投資家が⽶国の住宅を買っているため、地域によっては、⼀次取得者層はマイホームの購⼊に際して彼らと対峙しなければなりません。
本来、機関投資家は、複合住宅、つまりアパートメントなどの⼤型の賃貸物件を買って賃料を得ながら、物件の価格が上昇すると売却して利益を得ています。しかし今回は、⼀段掘り下げて、⼾建てやタウンハウス、コンドミニアムといった個別のユニットを購⼊しています。
MLS（multiple listing Service：不動産物件検索情報サイト）の最⼤⼿であるリアルター・ドットコム（Realtor.com）のデータは、販売総数に占める投資家の割合が2015年以来最⾼であることを⽰しています。彼らの主な購⼊地域は、価格の安定している中⻄部や⼈⼝が増えている南東部のサンベルト地帯です。
住宅の賃貸価格は全体的には上昇していますが、これらの地域の住宅価格は、⻄部地区などと⽐較しても、まだ購⼊しやすい価格帯だからです。
「投資家は、⼀次取得者層が購⼊するような地域の⼿頃な価格の住宅を選んでいる」と、リアルター・ドットコムのエコノミックリサーチのマネージャーであるジョージ・ラティウ⽒は述べ、「投資家は現⾦で購⼊するので、価格が⾼騰している現在の状況では、モーゲージ（mortgage：住宅ローン）を取得してマイホームを購⼊する⼀次取得者層よりも、格段に有利な状況にいる」と続けています。
マーケットにおける機関投資家のシェアはわずかですが、着実に増加していることは確かです。特に、⽶国中⻄部や南部のサンベルト地帯などはその傾向が強く、今年の1⽉から7⽉までの7ヶ⽉間で、販売総数の5.5%を占めるほどになりました。
「グレートリセッションの前は、多くの投資家の⽬的は物件をフリップ（flip：短期転売で利益をあげる投資法）することにあった。しかし今は、プロの投資家が物件を購⼊して賃貸に
回している。このパンミックで、郊外の住宅の需要が急増したことを考えれば当然であり、ミレニアル世代の若者のすべてが頭⾦の都合をつけられるわけではない」と、コロンビア⼤学の
不動産学部のトマーズ・ピスココゥスキー教授は述べています。
マイホームの購⼊を⽬指している⼀次取得者層にとっては、とんでもない相⼿が出て来たことでしょうが、⾒⽅を変えれば、不動産市場にプラスの影響も与えています。昔からフリッ
パーは、中古物件を購⼊後にリモデリングをして再び市場に出しています。これは、⽶国の既存住宅市場における住宅の中間値が40年近くになっている今、ある意味ではとても歓迎される
べきことです。他の投資家も、⼀定期間賃貸物件として保有した後に売却するのが通例です。
つまり、これらの物件はいずれ市場に戻ってくるので、販売物件の在庫も増加することになります。
リアルター・ドットコム社のリサーチチームは、全⽶50⼤都市圏の7⽉の登記情報を調査し、⼾建てやタウンハウス、コンドミニアムを購⼊した法⼈（LLP, LP, LLC, GP or Trustなど）
をチェックしました。この調査には、個⼈投資家（mom and pops）が購⼊して、賃貸やAirbnbなどを営んでいるユニットは含まれていません。⽶国の賃貸物件の41％は、個⼈投資家
が保有しています。
また地理的な公平性を保つために、1つの州から選ぶのは1都市あるいは都市圏としています。